創業ストーリー|インタビュー

「あったら便利、でもありそうでない」から始まった。

株式会社WY 代表・靳威に、創業の原点を聞いた。

Q. まず、WYのものづくりを一言で表すと?

「あったら便利なのに、ありそうでない」。私のものづくりは、いつもこの一言から始まります。日々の小さな不便を見つけて、それを解決する道具を自分の手で形にする。WYという会社は、その繰り返しでできています。

Q. 起業のきっかけは何だったのでしょう。

会社員時代のある出来事でした。総合デザイン事務所でWEBデザイナーとして働きながら、社内の商品アイデアコンペに何度か応募していたんです。採用はされませんでしたが、そのうちのひとつが、約1年後によく似た商品として別のメーカーから発売されて。

「同じことを考えている人は、きっと世の中にたくさんいる。違いは、それを頭の中で終わらせず、実際に形にするかどうかだけなんだ」。そう感じたとき、自分のアイデアを自分の手で形にしてみたい、という気持ちが自然とふくらんでいきました。

Q. 前職ではどんな仕事を?

総合デザイン事務所で、7年ほどWEBデザイナーをしていました。パソコン周辺機器の大手メーカーのサイトやEC販売サイトの立ち上げ、商品ページの制作、商品撮影の総監督まで。ものを「つくって、伝えて、売る」一通りの流れを、現場で学んだ時期でした。

Q. 最初の一歩は、どんなふうに踏み出したのですか。

海外から単身で日本に来た私には、いつか自分が思い描いた道具を、自分の手で世に届けてみたい——そんな思いがずっと心のどこかにありました。2011年、個人事業として小さく始めます。

とはいえ資金はわずか。中国のネット通販で日本では見かけない面白い道具を探して仕入れ、住んでいた6畳の部屋を倉庫兼スタジオにして、自分で写真を撮って売りました。最初に当たったのは、カードサイズの折りたたみLEDライト。毎日何十個も売れて、梱包に追われた忙しさは今でもよく覚えています。

Q. 「これだ」と手応えを感じた商品は?

超小型のUSBカーチャージャーですね。当時の製品は車から大きく飛び出して不格好なものばかりでした。私が選んだのは、ソケットからほとんど出っ張らず、しかも2台同時に充電できる一台。まさに「ありそうで、なかった」道具でした。

これが評判を呼び、初めて自社のロゴを入れて、パッケージも自分たちで用意しました。商品づくりの手応えを、はっきりと感じた瞬間でした。

Q. 商品を選ぶとき、大事にしていることは?

「ちょっとした困りごとを解決する、一芸のある道具」であること。これはジャンルが変わっても、ずっと同じです。

たとえば、火を使わないLEDキャンドル。留学生の頃に結婚式場でアルバイトをしていて、新婦のドレスが蝋燭に触れて煙が上がる瞬間に、たまたま居合わせたことがあるんです。火を使わず、リモコンで灯せるキャンドルがあれば、もっと安心して使えるはず——そんな実体験が、この商品を選ぶ後押しになりました。自分が感じた小さな不便は、きっと誰かの不便でもある。そう信じています。

暗がりで炎のようにやさしく灯るLEDティーライトキャンドル
火を使わずに灯る、WYのLEDキャンドル。

Q. そこから、会社はどう広がっていったのでしょう。

2013年に法人化して、楽天市場にも店を構えました。お客様に「これ便利だね」と言ってもらえるたびに、ものづくりはやめられないなと感じます。

——もっとも、順調に伸びていったこの会社が、やがて大きな壁にぶつかることになるのですが。その話は、次のストーリーで。

語り手:株式会社WY 代表 靳威