一番苦しい時期に、たどり着いた答え。
創業以来のピークに売上が届いた一方で、足元では問題が積み重なっていました。商品数が増えるほど経費は膨らみ、宅配便の運賃も一斉に値上がりして、それだけで年間数百万円の負担増。気づけば赤字に転じ、資金繰りはみるみる苦しくなっていきました。
何よりこたえたのは、品質の問題でした。日系の検品会社と契約し、海外工場の製造ラインに入ってもらっても、不良品の混入はゼロになりません。日本の倉庫に届いてからも、一つひとつ開封して検品する。品質を「高める」というより、不良を取り除いて良品の数をなんとか確保する——そんな毎日でした。こんなものづくりがしたくて始めたわけじゃない。自分でも自信を持てない商品に、少しずつ気持ちが離れていきました。
保管も梱包も外部の倉庫に任せていたので、検品も物流もコストばかりがかさんでいきます。まさに四方をふさがれたような状況でした。そんな中で、条件のいい倉庫物件に出会います。思い切って、物流を自分たちでやろう——そう決めました。
頼れるのは、学生時代に短期間だけ経験した倉庫アルバイトの記憶くらい。それでも、信頼する社員たちが自分から物流の仕組みを学んでくれて、みんなで力を合わせ、2019年に自社の物流センターを立ち上げました。物流を自分たちの手で握ったことで、検品の体制はぐっとしっかりし、品質を守る自由もきくようになりました。倉庫の空いたスペースには、昔から好きだった木工のための小さな作業場も作り、社内で使う什器などをDIYで作り始めました。
ようやく物流費も抑えられ、黒字の見通しが立ってきた——その矢先に、コロナがやってきます。中国の工場は半年以上もロックダウンを繰り返し、主力商品は在庫切れに。円安と、コロナ前のほぼ倍に跳ね上がった海上運賃で利益率は一気に悪化し、年間の売上は3分の1にまで落ち込みました。
海外製品の品質に振り回されて疲れ、今度は世界情勢で採算が崩れる。何をやってもうまくいかない。「このままでは、絶対にだめだ」。そう思っても、新しいことを始める資金もなければ、そもそも何をすればいいのかも分かりませんでした。資金をつなぐだけで精一杯の日々が続きます。
そんなとき、国が「事業再構築補助金」という制度を新しくつくった、というニュースを目にしました。中小企業庁のサイトには、その狙いを語る動画が載っていて——「事業を変えなければと思っても、投資するお金がなく、ずるずると続けてしまう中小企業を後押しするための制度だ」と。まるで、自分のことを言われているようでした。
見終えたとき、ひとつの考えが浮かびました。ずっと好きで続けてきた木工を、本格的にやってみたら。自分たちの手でつくる木製品なら、もう一度、胸を張れるものづくりができるかもしれない。外注に頼って品質に悩むのではなく、自分たちの手でつくる。そう心が決まった瞬間でした。
こうして私は、自社の木工所を立ち上げる計画を描き、補助金の申請に挑むことになります。——その先の話は、次のストーリーで。
——株式会社WY 代表 靳威