創業ストーリー

「あったら便利、でもありそうでない」から始まった。

「あったら便利なのに、ありそうでない」。私のものづくりは、いつもこの一言から始まります。日々の小さな不便を見つけて、それを解決する道具を自分の手で形にする。WYという会社は、その繰り返しでできています。

きっかけは、会社員時代のある出来事でした。私は総合デザイン事務所でWEBデザイナーとして働きながら、社内の商品アイデアコンペに何度か応募していました。採用されることはありませんでしたが、そのうちのひとつが、約1年後によく似た商品として別のメーカーから発売されたのです。「同じことを考えている人は、きっと世の中にたくさんいる。違いは、それを頭の中で終わらせず、実際に形にするかどうかだけなんだ」。そう感じたとき、自分のアイデアを自分の手で形にしてみたい、という気持ちが自然とふくらんでいきました。

海外から単身で日本に来た私には、いつか、自分が思い描いた道具を、自分の手で世に届けてみたい——そんな思いが、ずっと心のどこかにありました。2011年、個人事業として小さく一歩を踏み出します。とはいえ資金はわずか。最初は中国のネット通販で日本では見かけない面白い道具を探して仕入れ、住んでいた6畳の部屋を倉庫兼スタジオにして、自分で写真を撮って売りました。最初に当たったのは、カードサイズの折りたたみLEDライト。毎日何十個も売れて梱包に追われた忙しさは、今でもよく覚えています。

次のヒットは、超小型のUSBカーチャージャーでした。当時の製品は車から大きく飛び出して不格好なものばかり。私が選んだのは、ソケットからほとんど出っ張らず、しかも2台同時に充電できる一台です。まさに「ありそうで、なかった」道具でした。これが評判を呼び、初めて自社のロゴを入れ、パッケージも自分たちで用意しました。商品づくりの手応えを、はっきりと感じた瞬間でした。

扱う商品のジャンルは少しずつ変わっても、選ぶ基準はいつも同じでした。「ちょっとした困りごとを解決する、一芸のある道具」であること。たとえば、火を使わないLEDキャンドル。留学生の頃に結婚式場でアルバイトをしていた私は、新婦のドレスが蝋燭に触れて煙が上がる瞬間に、たまたま居合わせたことがあります。火を使わず、リモコンで灯せるキャンドルがあれば、もっと安心して使えるはず——そんな実体験が、この商品を選ぶ後押しになりました。自分が感じた小さな不便は、きっと誰かの不便でもある。そう信じて商品を選んできました。

グラスホルダーに入れたLEDキャンドルと、点灯を操作するリモコン。火を使わず灯りを楽しめる
火を使わず、リモコンで灯せるLEDキャンドル。

2013年には法人化し、楽天市場にも店を構えました。お客様に「これ便利だね」と言ってもらえるたびに、ものづくりはやめられないと感じます。——もっとも、順調に伸びていったこの会社が、やがて大きな壁にぶつかることになるのですが、その話は次のストーリーで。

——株式会社WY 代表 靳威